陶芸家:小川哲央
プロフィール
1968年 岐阜県岐阜市に生まれ、大学で油絵を学び、卒業後、欧州各地を旅しながら油絵を描く日々を送る。
1993年 日本に戻り自身の創作の道を模索していた時、山中で偶然立ち上がる薪窯の煙を目にする。
その煙の元で見た薪窯の炎は美しく、神々しく、瞬時に窯神の「炎の處」となり、自らの生涯を陶芸に捧げることを誓う。
翌年から全国の窯業地を訪れる旅に出、美濃、伊賀、備前、萩、唐津、丹波、越前と各地を渡り歩き、築炉(薪窯作り)、窯焚き、粘土鉱山、粘土工場、 釉薬工場、窯元で働き、全ての作業を経験しその技術を会得する。
1998年 岐阜県恵那市に「小川窯」を築窯し、陶芸家・小川哲央としての道を步み始める。
その後、作陶・創作活動に励み、2005年までには東京銀座の黒田陶苑など、日本各地のギャラリーや百貨店で年数回、個展を開催するまでとなり、自身の価値を高め評価を得る。
経歴
1968年 岐阜市に生まれる
1994年 陶工を目指し全国の窯業地陶芸家を訪ねる
1998年 陶土の里山岡に薪窯を築き独立
1999年 国際美術院常任理事就任
2000年 日本芸術協会理事就任
2001年 国際美術院展 知事賞
2002年 日本芸術協会常任理事就任
日本芸術協会展 最優秀賞
2003年 日本芸術協会展 知事賞
東武百貨店池袋店にて初個展
2004年 2月 画廊 文錦堂にて個展
2004年 4月ギャラリー花棕櫚にて個展
2004年 5月銀座 黒田陶苑にて個展
2004年11月 たち吉本店「酒の器展」に出展
2004年12月 日本橋三越本店「ぐい呑み展」に出展
2005年 5月銀座 黒田陶苑にて個展
2005年 7月横浜 高島屋にて個展
2005年 9月京都たち吉本店にて個展
2005年11月 東京メトロポリタンアート本展 TMA展に出展
2006年 2月呉そごう「椿展」にてに出展
2006年 2月盛岡 川徳 「百椿会展」に出展
2006年 3月たち吉 本店三階工芸サロンにて個展
2006年 5月横浜高島屋「たち吉俊英作家湯呑・急須展」に出展
2006年10月 たち吉主催 新宿伊勢丹「暖かな器展」に出展
2006年11月 福岡岩田屋「酒の器展」に出展
2006年12月 たち吉本店「酒の器展」に出展
2006年12月 たち吉主催 新宿小田急「酒の器逸品展」に出展
2007年 1月 たち吉主催 横浜タカシマヤ「酒の器逸品展」に出展
2007年 4月 横浜高島屋「新茶を愉しむ」俊英作家湯呑展に出展
2007年 6月 たち吉主催 千葉そごうにて個展
作陶姿勢
恵那の地に魅せられて
自らが山に入り薪窯を作り、原料を探し精製、木を伐り割り、薪を準備し薪窯を焚く。
昔ながらのやきものは粘土を素地とし、釉薬は長石、含鉄土石、木灰、ワラ灰の4つから作られてきた。
ここ恵那は、それら企てが揃う日本で唯一の場所であり、薪窯の燃料である赤松も豊富。
また、一年の気温差や昼夜の温度差が大きく、赤松にたっぷりのヤニが含まれているので、この薪は薪窯の命である「火力」に優れる。
自らが山に入り、自らの五感で原材料を探し、薪窯を焚くという、理想郷が恵那の地である。
小川哲央は陶芸にかかわるすべての工程を自ら一人で行う ことにより、作品一つひとつに生命力が宿り、原料となる生きとし生けるものに、愛情と作陶の神聖やなる心が刻まれている。
無心で土をこね、薪窯で時を待つ。
そして自らの審美眼で、何万何千の中から至高の一品を産み出す。
そのためには普段から古今東西のあらゆる優れた作品に触れ、選び抜く目を研ぎ澄ます必要がある。
陶芸家は自らの理想の中だけにある頂を目指し、いくつもの障害を乗り越え、生涯をかけて歩み続けていかなければならない。終わりのない自分との戦いである。
温故知新
故きを温ね新しきを知る一「温故知新」の教えに従い、 日本古来の陶芸の技術と精神を未来に伝えようとの想いから、一心不乱に原料元、陶工、築炉師、窯焚き師としての道を極め、伝統陶芸のあらゆる工程を熟知する職人として陶 器を作り続けることを目指す。
これは「窯ぐれ」であり続けることを意味し、それを自らの天命と考え、日本の陶芸文化を学び継承し、研鑽を続けてその質を高め、さらに次世代へと伝えていく。
それは道を切り開くごとく、創造の求道者として生きていくことに他ならない。
岐阜県恵那に生きる
古来、日本の陶芸は、自然と共にあった。
巡るめく季節を肌で感じ、四季に合わせて作業をする。これこそが日本本来のやきもの作りの姿である。だからこそ、昔のやきものには、力強い生命力が備わっていたのだと思う。
小川哲央はその思いを胸に、一歩でも先人の境地に近づきたいと、日々、精進している。
「冬」
やきものの食料とも言うべき赤松は、11月~12月に伐ると、ヤニがたっぷりと含まれ火力が強い。
そこで初冬に赤松を伐り倒し、冬の間に50cmに切り揃え谷で割り、薪作りをする。
「春」
雪が融け、春になると、まずは山に入り、原料を探す。
陶芸の原料は恵那のあちこちの山にあるのだが、草が生え始めると探せなくなるため、雪が融け、春になると、まずは五感を頼りに野山を歩く。
ここ恵那には粘土、長石等の原料が豊富にあるので陶芸家にとっての理想の地。
「夏」
燦々と輝く太陽の力を利用して粘土と釉薬を作る。
恵那の地で採れた粘土を乾かし砕き、フルイを通し水を加え練る。この粘土は最低3年以上寝かせてから使う。
釉薬もそのまま使わず、天日干しして、太陽のエネルギーを注入してから、混ぜ合わせて使う。
「秋」
新窯を焚くのに最高の季節。乾いた空気の影響で落ち着きのあるやきものが焼ける。
薪窯焚きは、湿気の影響を多大に受けるのだが、この湿気をうまく利用できれば素晴らしいやきものが生まれる。